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平成8年に行われた、車両編成の10両化と運行の2分間隔化にあたっては、ホームの改良などに多くの事業費が投入されたが、これ以上の輸送力増強を図るためには、施設全体にわたる抜本的な改良が必要となり、巨額の事業費を必要とすることから、御堂筋線の輸送力増強は、限界に達していると考えられる。
?オフピーク通勤推進への取り組み
大阪圏におけるオフピーク通勤推進への取り組みは、関西鉄道協会が毎年作成する統一ポスターを各鉄道事業者が駅構内に掲示するほか、大阪市交通局等一部の鉄道事業者は独自のポスターやパンフレットを作成し、PRに努めている。しかし、一部の鉄道事業者や関係機関は、大阪圏の通勤混雑の現状を、それほど切迫した問題と認識しておらず、首都圏が行っているような各鉄道事業者や関係機関が協力した一体的な取り組みは行われていないのが現状である。
また、産業・労働関係団体等においても、首都圏に比べてこうした快適通勤への取組みは積極的に行われていない。
?快適通勤への利用者の関心
本調査研究で実験的に実施したポスター等による「快適通勤」のPRについては、実施期間が短かかったが、利用者へのアンケート調査結果から、一定の関心がみられたことが伺える。
特に、20歳代や30歳代の比較的若い層や60歳以上の高年代層での関心が高く、また男性よりも女性の方がやや関心が高い結果となった。関心の高い快適通勤の方法としては時差通勤とフレックスタイム制を中心に多様な内容となっている。また、「試してみようと思う方法」では、手軽に実行できる「中間車両への乗車」が高くなっている。さらに、試そうと思わない理由では、「今の通勤方法がベスト」が多いものの、「試す機会がない」という回答も少なくなく、何らかの動機づけや、インセンティブがあれば試してみる層があると考えられる。

 

(将来展望)

こうした状況に対して、すでに指摘したように、今後の通勤事情は、社会経済環境の変化(ソフト化、サービス化、情報化など)によるフレックスタイム制、サテライトオフィス、在宅勤務制などの多様な勤務形態への移行や、国際化、少子化、高齢者・女性の就労増加などの要因と相まって、ピーク時間帯への集中は徐々に緩和される方向にあると考えられる。
このため、ピーク時の輸送力を増強するだけでなく、既存の資源を有効に活用するために時差通勤や並行代替路線への分散を図るなど、コストをかけない需要コントロール方策が当面必要とされる。

 

 

 

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